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911DAYS メイキング NINE ELEVEN DAYS Vol.4わりかし気になる911捜索隊「ポルシェ996ターボとゲンバラ996ビターボGT500に乗る」

 

更新日: 2007年01月31日

誌面では、元F1パイロット片山右京さんが996ターボとゲンバラGT500を駆り、スーパーテクニックを使ってインプレッションした。ここでは、「わりかし気になる911捜索隊」の隊長日比野と隊員関が、一般的なテクニックを用いて2台のスペシャルターボに試乗した。二人の導き出した答えは……。

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箱根の山は天下の嶮(右京さんが帰った後の箱根のワインディングにて)

 はッこ、ねッの、やッま、わァ、てェん、かァの、けん……。
日比野 いくら箱根だからって、もっとヒネリの効いた歌はないの。
 はい、ごいっしょにッ!
日比野・ ……。
日比野 なんでいきなり黙るのよ。
 歌ってくださいよ。はいッ!
日比野 その後の歌詞知らないもん。
 ボクもです。
日比野 ……。
 右京さん、ボクスターに乗って颯爽と帰っちゃいましたねェ。
日比野 横に乗ってどうだった?
 そりゃすげェすよ。本人は2分か3分の力で走ってたらしいですけど、細かいカウンター当てまくりでしたからね。ゲンバラを走らせているとき、「ブースト計見て教えてくれる?」と言うんで、腹筋使って首伸ばしてセンターコンソールのブースト計見ながら、「0.7!」とか「0.8!」とか教えてあげたんです。
日比野 なんかWRCのナビみたい。
 その度ごとに、右京さんフロントスクリーン睨みながら「ん」「ん」て軽く頷いて、「アクセル開度1cmでこの加速は凄いな」とひとり感心してました。ティレル022のセッティングを出してるみたいに、真剣そのものでしたね。
日比野 さすが右京さん、ストイックでカッコイイなァ。よし決めた。ゲンバラに乗ったら、ぜひそれをやろう! オレにもブースト計見て教えてくれ!! ティレル022のセッティングを出すみたいにいくぞ。
 大きなこと言っても、「ニードフォースピード」のマシンセッティングもうまく出来ないクセに。
日比野 やかましいよ……。

函谷関も物ならず(2台のスーパーターボと対峙して)

 さんざん撮影した後なんで、2台とも見慣れて比較的冷静に判断できると思います。2台のエクステリアからいきましょうか。
日比野 996ターボはボディワークを上手くまとめてきたよね。フェンダーが張り出した分、カレラよりも迫力が出た。ただ、930時代のカレラとターボほどの視覚的違いがないのは残念だけどね。もっと“ワル”に振っても良かったんじゃないのかな。
 ええ。930ターボはワルな匂いがしますもんね。一方の996ターボは優等生的です。特にゲンバラGT500とこうして並んでいると、それは痛感します。
日比野 ゲンバラはワイドフェンダーがいいね。996カレラより迫力が出た。トランクフードの上端のエアインテークも、993までの911みたいで好きだな。
 往年のゲンバラのゲバゲバとした雰囲気はなくなりましたね。
日比野 うん。ちょっとワルな雰囲気もあるし、ホイールのセンターロック風キャップなんて気が利いてて面白いじゃない。
 ええ。996ターボがヘッドライトデザインを変えて登場したのは正解でした。個人的には、わりとこのヘッドライトデザインは好きですから。ちなみに、2002年モデルからカレラにもこのライトが降りてくるみたいですけど。
日比野 うん。ドイツの雑誌に、ターボライトを付けた2002年モデルのカレラが載ってたんだけど、なんかしっくり来てなかったなァ。このライトは、フロントバンパーにある程度視覚的ボリュームがあって、初めて生きてくるデザインなのかもしれない。
 といったところで、さっそく996ターボから試乗しましょう。
日比野 待ってました!

万丈の山先仭の谷(996ターボの速さに絶句)

 
  996ターボの車内。あまりの安定した速さに、日比野、関は絶句
  photo photo
  420psを発生するエンジン。車内にいる分には割と静かだが、疾走しているところを外から見るとかなり勇ましいサウンドを発する 世界一のブレーキ。これが惚れ惚れするくらい正確によく効く。余談だが、右京さんがボクスターSを購入した唯一にして最大の理由は、ポルシェのブレーキに惚れたから。元F1パイロットをも虜にするのが、ポルシェのブレーキなのだ
 
  ダッシュボードに革が張ってあるなど、「高級さ」を出そうと腐心しているターボのインテリア。おかげで、なんとか996カレラのようなプラスチッキーな安っぽさは感じなくなった
 

(日比野が996ターボのステアリングを握る。関はナビシートへ)

 996ターボはダッシュに革を貼ったりして、高級感を出そうと頑張っていますよね。
日比野 ううむ、それは分かるんだけどさ、はっきり言って996カレラと変わんないよね。ま、これまでのターボの歴史でもカレラとターボのインパネは同じだったから、そのことについてどうこう言おうとは思わないけど。
 右京さんは「ボクスターと一緒だから、ボクスターオーナーとしては嬉しいんだけどねェ……」って言ってましたね。
日比野 うん、まさに問題はそこ。細部は違うんだけど、やっぱりボクスターと同じに見えるのがツライんだよね。なにせ、996ターボは1680万円で、ボクスター2.7は550万円。もっと一目で変わる違いが欲しい。
 それは言えます。
日比野 じゃ、行くよ!
 はいな。

(ターボは箱根のワインディングを1速全開で駆け上る)

日比野 うっひょォ! すっげェ加速!! と言ってる間に2速。で、もう3速! なんなんだこの加速は!
 ボクはポルシェジャパンから箱根まで、996ターボをドライブしてきたわけですけど、この加速には正直驚きました。305キロの公称最高速も本当だなと思わせる、速さと安定ぶりです。ただ、速過ぎて怖い。
日比野 たしかにこりゃ速すぎるよ。直線の加速だけでいったら、TIサーキットで乗った996GT3Rよりも速いね。これはヘタしたら死んじゃうね。
 ボクも高速カッ飛んでるとき、あまりの速さに「死ぬゥ!」と思いましたもん。
日比野 「死ぬゥ!」って思いながら公道トバすんじゃないよ、まったく。そういうときはアクセル戻しなさい、チキンレースじゃないんだから。
 ……へい。
日比野 あのね、996ターボはすごく優秀なんだ。ホラ、こんなスピードでコーナーに入っても、まったく安定してるでしょ。オレンジ号なら、そうとう怖いというか、まず走れないね。死ぬって言ったのは、996ターボのハード面について言ったわけじゃない。
 涼しい顔して996ターボをドライブしている右京さんに、「箱根まで高速で来たんですけど、速すぎて怖かったんですよ」って告白したら、「それは目が速さについていっていないだけ。慣れればどうってことないよ」と言われてしまいました。要するに、「死んじゃう」のは、ドライバーがあまりの速さに、アタマの中がとっ散らかっちゃった時でしょうね。なにせ、996ターボで加速していると、自分がフリスビーになって空を飛んでる感じがしますから。かなり加速Gはあるんですけど、どこかバーチャルな匂いのする異次元的速さなんです。つい我を忘れちゃう。
日比野 だ・か・ら、我を忘れるなって! とにかく、996ターボを無理してトバさないことは大切だね。世界一安全なスポーツカーを無理のないスピードで走らせている限り、世界で最も安全に移動していることになると思うんだ。
 イチローにキャッチボールさせるのと同じことですね。世界で一番安定したキャッチボール。
日比野 意味わかんねェよ!
 ところで、996ターボは420馬力のスーパーマシンらしい勇ましいエンジン音はしないですよね。
日比野 そんなことないって。乗ってるとそう思うかもしれないけど、ロケ場所に来る途中の高速で、オレが運転しているロケバスを関クンの996ターボが一瞬でブチ抜いたときの音は凄かったもん。白状するけど、その後姿見てカッコイイなと思った。
 きっとボクが「死ぬゥ!」って泣きそうになってるときですね。
日比野 ……多分ね。

雲は山をめぐり霧は谷をとざす(ゲンバラは不良のニオイがした)

 
レカロSPGに5点式シートベルトで固定された、ゲンバラGT500のふたり  
 
サイドブレーキ横で、任意にシフトアップランプを点灯させる回転数を決定できる メータナセルの庇にランプがこのように設置されている。これが、設定回転数に近づくにつれて、ピピピと順に点灯する仕組み  
 
カレラの3.4リッターエンジンをベースにツインターボ化し、550psを発生するまでになった水冷フラット6。インタークーラーを背負ったエンジンルームの眺めは、見慣れたポルシェターボのもの センターコンソールに2つの追加メーターを設置。向かって右がブースト計、左が油温計。右京さんの指示で関はブースト計とにらめっこしていた  
 

 さ、次はゲンバラですよ。
(日比野、ドライバーズシートへ。関、ナビシートに乗り込む)
日比野 ダッシュやコンソールにカーボンが多用してあって、少しも安っぽい感じがないところがいいね。シフトアップランプも、その気にさせてくれる装備だと思うな。
 レカロSPGと5点式シートベルトの組み合わせに、右京さんは嬉しそうでしたけど。
日比野 その気持ち分かるなァ。
 ええ。ささ、早く行きましょうよ。
日比野 よし、それじゃ、エンジンスタート!

(550馬力ツインターボが目覚める)

 ゲンバラは、車内にいてもけっこう勇ましい音が聞こえて来るんですよね。
日比野 うん。いい感じだね。ほんじゃ、行くよ。
 ほい。

(野太い排気音を轟かせながら、ゲンバラが箱根のワインディングを駆け上がって行く。高速コーナーをギャンとひとつクリアする)

日比野 おお、ゲンバラはしっかりRRの挙動が出るね。動きが空冷の911っぽくて、面白いよ。そんなに攻めていなくても、このクルマの楽しさはビシビシ伝わってくる。
 ほう。
日比野 996ターボよりは低速トルクがないようにも感じるんだけど、なにせ550馬力だからね。加速はもう十二分。ターボラグもほとんど気にならないレベルだし、これを思いのまま振り回せるウデがあったら楽しいだろうね。
 右京さんは、本当に楽しそうでした。あ、調子に乗ってエンジン回さないでくださいよ。6000回転までと決められているんですから。
日比野 分かってるって。それに、そんなに回さないよ。速すぎちゃってヤバいから。
 そう言えば、右京さんは6000回転ピタリできっちりシフトアップしていましたね。タコメーター上で6000回転の表示から針が1mmも多く回ってないし、1mmも少なくない。で、微操舵加えながら楽勝で走っちゃうんですから、さすがです。
日比野 元F1パイロット、しかも1周とはいえトップを走ったことがあるお方だから、当たり前だって。それにしても、ゲンバラは予想外にいいね。
 ちょっと強面な人が、話してみると意外にいい人だったみたいな感じですか?
日比野 その例えがよく分かんないけど、ま、そんな感じかな。
 といったところで、走りながらですが、そろそろこのクルマをお返ししなくちゃならないんで、結論にいきましょうか。996ターボとゲンバラGT500、この2台を乗り比べてどうでした?
日比野 996ターボは、圧倒的に速いという意味で、久しぶりにワクワクするポルシェに出会えた感じがしたね。ゲンバラはRRだけあって、930乗りとしては非常に共感できる味を持っている。
 996ターボは、ポルシェ社が作ったツインターボ車ということもあって、しっかり煮詰めて作ってあるから、走りからなにからトータルバランスがいい。ひとつひとつの項目が異常に高い出来なだけに、突出して良いところや悪いところがない分、ある意味特徴がなくなっている。ま、これはゲンバラに比べてという意味で、他のクルマに比べたら歴然とした特徴はあるんですけど。一方のゲンバラは、社外メーカーの作品ということもあって、ドライブして楽しい方向へグッとベクトルを振れた。
日比野 うん。2台の背負っているものが、それぞれストレートにクルマに反映されていて、非常に興味深いインプレッションになったね。
 はい。あ、あそこの駐車場が、ゲンバラを受け渡す約束の場所です。

 

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