911DAYS メイキング NINE ELEVEN DAYS Vol.2+13馬力の余裕!?　バリオラムは体感できるか

更新日: 2007年02月01日

　左の黒い993の横で呆然と立っている紺色づくめの男が、ワタクシ関です。場所は、箱根ターンパイクの通称「便所コーナー」。しかし、便所が強制撤去されてから、いや強制だったのかは知りませんが、ともかくなくなってからずいぶん時間が経つので、今ではネーミングも変わっているかもしれません。「元便所コーナー」だとか「在りし日の便所コーナー」だとか「便所コーナー跡」だとか「懐かしの便所コーナー」だとか、ええとそれから……。こほん。
　撮影です。

　当日は、ワタクシが横浜でオーナー氏からカレラSを、日比野が東京のショップさんで96年式カレラをお借りし、その他２台のオーナー氏とは箱根で待ち合わせをして撮影をする段取りでした。日比野はオレンジ号に乗り、村越とともに東京を目指します。
　ワタクシが予定通り横浜青葉インターを出た頃、携帯電話がピロピロと不吉に鳴りました。ロケの本番直前に鳴る携帯は、経験上あまり良いものではありません。ドキドキしながらカバンからモゾモゾ携帯を取り出し、着信を見ると日比野です。これはますます不吉。一瞬出るのを止めようかと思いつつも、意を決して緑色の受話器のボタンを押しました。

「ダメだ、そっちに行けんわ」
　うお、やっぱ出なきゃ良かった。聞かなかったことにしよう、「それじゃ」と言いかけると、「壊れちゃった、オレンジ号……」。タメ息とともに寂しげな声が聞こえてきます。
　マジ？

　よく聞いてみると、高速道路上でミッションが壊れたというではありませんか（この時点ではミッショントラブルだと思っていた。詳しくは、12月7日更新予定の『隔週のオレンジ号参照』）。ほうほうの体でたどり着いたサービスエリアから、電話をかけて来ているようなのです。携帯電話の向こうの日比野は、諦めきった声で「オレンジ号は動けそうもない」と言います。そして、「今から村越と朝メシをヤケ食いする」という言葉を残し、携帯は切れました。

　でも、そのときはまだ何とかなるんじゃないだろうかと、ワタクシは望みを捨てていませんでした。いや、捨てられなかったのかもしれません。なにせこの日を逃したら、4台の993、熊倉さん、カメラマンさんのスケジュールが合いません。ただでさえ、〆切ギリギリの日程です。もう一度、イチからロケの段取りを組み直すことは事実上不可能……。つまりこの日にロケができないことは、即ページに穴が開くことを意味するのです。
　そうやってあらためて考えを整理したとたん、脳ミソが現実逃避したのか、意識がプツ、プツと途切れ始めました。

　しばらくしてまた日比野から電話があり、オレンジ号が積車で名古屋送りになったことを知らされました。必然的に日比野も村越も名古屋へ強制送還されるわけです。

　マジかよう。ああぁぁぁ……。このままじゃ、ロケは中止でページに穴が開いてしまうじゃないか。どうすんだよォ。……ページに穴、ページに穴、穴穴穴……。運転中にもかかわらず、ワタクシは穴という文字で一杯になった頭を抱えてしまいました。ああ、穴……。

「手伝おうか」
　そのとき、助手席から天使の声。実は、別件で本誌編集顧問水野がワタクシと同乗して横浜まで来ていたのです。
「……あな」
　思わずそう呟いて、慌てて「本当ですか！」と問いただしました。
「相手先に予定をなんとか変更してもらって、ロケを手伝うよ」
　水野はそう言うと、携帯でどこかに電話をし始めました。
　捨てる神あれば拾う神あり――。
　このとき、たまには編集顧問と一緒に行動すべきだな、と気持ちを新たにしたことは言うまでもありません。

　左の黒い993カレラに手をついて向こうを見ているのが、本誌編集顧問の水野です。

　なにはともあれ、ロケが無事終了してよかった。

　当日、お忙しい中お時間を割いて協力してくださったオーナーのお二方、大切な911をお貸しくださったオーナー氏、ショップさん、本当にありがとうございました。

　上の写真のあとに撮影したのが、本誌Vol.2、P18、19の見開き写真です。

おまけ
　村越がオレンジ号に同乗していたのは、オレンジ号を使用して『理想のドライビングポジションを追究する』の取材を行うためでした。この日の撮影をボウにふった青ざめた村越の、「朝メシのヤケ食い」はすごかったそうです。ちなみに、『理想のドライビングポジションを追究する』の取材は、2日後、ライター山田のSCを使用してなんとか終えることができました。よかったよかった。チャンチャン。

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